東大論文博士@創薬化学研究者のブログ

社会人が働きながら東京大学大学院で博士(薬科学)を取得したとある研究者の話

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【保存版】論文博士取得までの道のり 〜働きながら博士号を取得した私の記録〜

 

 

大学を卒業し、研究職に就いてから10年以上が経過した頃。ある日、上司からふと「論文博士、目指してみないか?」と打診を受けました。それがすべての始まりでした。

論文博士(博士論文を提出するのではなく、複数の査読付き論文を元に博士号を取得する方式)は、社会人研究者にとっては魅力的な制度です。とはいえ、その道は決して簡単なものではありません。私は製薬企業の研究職としてフルタイムで働きながら、実験、論文執筆、博士論文作成、そして試験と向き合い続けました。

この文章では、私がどのようなステップを経て論文博士(薬化学)を取得したのか、その全体像を振り返りたいと思います。詳細や当時の心情は、ぜひブログの各記事をたどってみてください。




ステップ1:教授への相談(2017年)

すべての出発点は、上司からの一言でした。

「お前、そろそろ論文博士でも狙ってみたら?」

自分の研究が博士号に値するのか、正直なところ自信はありませんでした。しかし、チャレンジする価値はある。そう思って、勇気を出して東大薬学部の教授にアポを取り、面談をお願いしました。

教授は穏やかに話を聞いてくれ、研究テーマや方向性を確認した上で、「可能性はあるね」と前向きな返答をいただきました。その言葉が、私の背中を大きく押してくれました。

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ステップ2:論文投稿(2017〜2021年)

論文博士に必要なのは、査読付きの学術論文です。

とはいえ、私はこれまで主著で論文を書いた経験がほとんどありませんでした。手探りの状態からのスタートでした。2017年から2019年にかけて、文献を読み漁り、書き方を勉強し、試行錯誤を重ねながら論文執筆に取り組みました。

2019年、ついに1報目がアクセプトされました。涙が出るほど嬉しかった瞬間でした。そして、2021年には2報目も無事にアクセプト。論文博士の申請条件である「一定数の査読付き論文」を満たすことができました。

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ステップ3:東大への申請(2021年1月)

必要な論文数が揃ったところで、改めて教授に連絡を取りました。ここからは、正式に東京大学に対して「論文博士としての学位申請」の手続きを進めていくことになります。

必要書類の準備は膨大で、履歴書、業績リスト、論文コピー、推薦状など、いくつもの書類を揃えて事務に提出しました。形式的なチェックも多く、書類ミスは一発アウト。仕事の合間を縫っての準備は本当に大変でした。

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ステップ4:予備審査(2022年5月)

予備審査は、申請された論文の学術的価値や申請者の研究者としての力量を確認するための重要なプロセスです。

コロナ禍だったこともあり、Zoomによるオンライン発表となりました。事前にスライドを練り直し、何度も模擬発表を繰り返しました。

当日は、想像以上に緊張しましたが、教授陣からの質問に何とか対応し、無事に予備審査を通過することができました。

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ステップ5:博士論文執筆(2022年1月〜7月)

ここからが正念場でした。

これまで発表してきた論文の内容を、ひとつの論文博士論文としてまとめ上げる作業。単なるコピー&ペーストではなく、研究の全体像を整理し、背景、目的、考察を丁寧に再構成しなければなりません。

しかも私はフルタイムの勤務研究者。平日の夜や週末を使って、文献を読み直し、足りないデータを自力で取得する必要もありました。まさに「働きながらの博士論文執筆」です。

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ステップ6:口頭試問と学力試験(2022年8月)

いよいよ最終関門。4人の副査の先生方との口頭試問と、筆記による学力試験が実施されました。

口頭試問では、研究の意義、方法論、データの信頼性、将来展望などについて厳しく問われました。しかし、事前の準備が功を奏し、1時間の試問をなんとか乗り越えることができました。

その後、有機化学創薬化学に関する筆記試験を受験。結果は――合格。ついに「博士(薬化学)」の称号を得ることができたのです。

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ステップ7:学位記授与(2022年10月)

学位取得が正式に決定し、東京大学より学位記が授与されました。

コロナの影響で授与式は中止となりましたが、郵送された学位記を手に取ったときの感動は今でも忘れられません。これまでの努力が形となり、報われた瞬間でした。

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最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

私の論文博士取得までの道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。時間のやりくり、実験の失敗、論文の書き直し、精神的な不安など、多くの壁がありました。

それでも、サポートしてくれた上司、指導してくださった教授、そして何より「やりきる」と決めた自分の覚悟が、この結果につながったのだと思います。

もし、論文博士取得を検討されている方がいれば、まずは信頼できる上司や指導者に相談してみてください。案外、あなたの背中を押してくれる人がいるかもしれません。

この記録が、同じように悩みながらも挑戦を考えている社会人研究者の一助となれば幸いです。

 

 

 

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